真山隼人の熱い想い。

2014年、浪曲親友協会主催の浪曲まつりを見に行き、オールスター出演に酔いしれていたときのこと。
出番を終えた真山隼人が走り寄ってきて、「お願いがあるんです」と、いつになく真剣なまなざしで話しかけてきました。
「浪曲をやってきておかげさまで東京にも行かせて頂いてご縁ができました。入門五周年の機会に東京の皆様への御恩返しに木馬亭公演をしたいと思っています。お手伝い頂けないでしょうか」
というものでした。正直驚きました。
日本で二番目に若いこの浪曲師がものすごい熱量で芸に打ち込んでいて、急成長を遂げていることはよく知っていました。しかし、普通ならそれでいっぱいいっぱいのこの時期に「五周年の恩返しに東京公演をしたい」なんてことまで考えているとは…
若いのに視野の広いこと!感心するともに、心意気に打たれ、二つ返事で協力を約束しました。

まず東西「最年少浪曲師」として国本はる乃、東西の「ハヤト」として澤勇人の御両人に出演をお願いして、他の出演者はどうしますかと相談すると、いつもお世話になっているからと、天中軒涼月、東家一太郎の名を挙げ、「若手だけでやってみたい」と言いました。
それは興行的に厳しいと言うと、彼は「赤字は自分がかぶります」と言いました。「その意気や良し!」としたいところなんですが…
芸人に赤字をかぶらすわけにはいきません。「師匠方に一人出てもらって、入場者を確保したほうがいい」と言うと「いやです」と…真山隼人、若いのに頑固です(笑)
あれだけ稽古に打ち込めるのは頑固一徹な証拠で、彼の長所でもあります。だから、そこを否定しちゃいけないんですが…
しかし、考えてみれば、若手だけでどこまでのお客様を呼べるのか、それをこちらの工夫で面白くできる余地があるのか、ということは浪曲界の未来を占う意味で重要かもしれないと、彼の提案をそのまま受けることにしました。
が、、正直しんどい話です…

とにかくこちらでできることはすべてやろうと、出演浪曲師のインタビュー動画を撮影し、YouTubeにアップしていきます。
さらに、特設サイトを設置し、浪曲データーベースにはチケット販売フォームを設置しました。これは将来的には、浪曲関係者が自身の企画を登録できるシステムにするつもりです。その暁には、企画者の労力軽減に繋がります。これらは浪曲の興行においてはあまりやられてこなかった手法です。公演までにご覧頂けましたら幸いです。

当日は真山隼人が二席と歌、国本はる乃、澤勇人、天中軒涼月、東家一太郎が一席づつ。
さらに出演者のうちの、若い三人の座談会を行います。どうして浪曲に飛び込んだのか、どこに魅力を感じているのか、まだまだ努力の余地のある彼らには、熱い想いが滾っているはずです。そして、彼らが感じている浪曲の魅力はこれから浪曲を聴く人の感じるものに近いところがあるでしょう。それを聞いてみたい。そこに新しいファンのための入り口が見えるかもしれませんし、未来を拓く鍵があるかもしれません。

10年20年先の浪曲界を支えるのは今回の出演者を含む若手たちです。
浪曲の未来のために彼らを支えなきゃ、甲斐がない。

まずは若い浪曲師たちをまずは見てもらい、後押しして頂きたい。
彼らの、そして浪曲の未来を支えて頂きたいと思っております。

浪曲データーベース管理人 末廣友吉

(2015/9/27木馬亭公演「真山隼人 お江戸に参上!」チラシ裏面より転載)

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