あらすじ | 港のキャバレーの用心棒田島健は、兵藤組の親分兵藤の毒牙から逃れようとして追われていたキャバレーの女真理を助けた事から兵藤組に追い廻される身となった。二人がほとぼりをさます為にやって来た奥伊豆の生活は、健に真理への愛情を呼び起した。ある日二人は偶然絵を描きに来ていた黒木幸夫に逢った。幸夫は真理の幼馴染で、意外にも健とは戦友であった。健の気持も知らぬ真理は、幸夫の芸術家らしい素朴に態度に惹かれ、ひたむきに幸夫に迫っていった。幸夫も健を裏切るのを苦にしながらも次第に心惹かれていった。一方兵藤は健と真理を追って奥伊豆へ迫り、子分達に命じて健を縛らせ、逃げ仕度をしている真理に獣欲に輝く眼をとびかからせた。かよわい女の抵抗もあわやと云う時、兵藤の妾の安子に救われた健がかけつけてきた。そそり立つ天城山中、健と兵藤の死力を尽くした男と男の決闘。遂に兵藤は健の一撃を受けて千仭の谷に蹴落されて。そして東京に立とうとしている幸夫と真理の手を握って、「幸せに暮してくれ」と云うのだった。二人の乗った汽船が静かに港を出てゆく。刑事の前に素直に両手を差出した健は、遠ざかってゆく船を見送ると、やがて、トボトボと淋しく曳かれて行くのだった。 |